鈴木康裕学長
(国際医療福祉大学)
国際医療福祉大学は、「国際性を目指した大学」を基本理念のひとつに掲げ、1995年の開学以来、アジアを中心とした国々や各国を代表する医科大学と活発に交流を重ねてまいりました。本学のこうした積極的な国際交流活動を背景として、日本主導の国際共同臨床研究・試験のネットワークであるARISE(ARO Alliance for ASEAN and East Asia)が、2020年より開始したAMED(国際研究開発法人国立国際医療研究センター)事業「感染症緊急事態に対応するためのアジア諸国および本邦アカデミアとの国際ARO アライアンスの機能強化、および関連機関との連携システム構築」に、ARISEの国際研究基盤戦略推進委員会担当として参加することへとつながりました。委員会メンバーとしては、委員長に下川宏明副大学院長、副委員長に加藤康幸感染症学教授、委員として松本哲哉感染症学主任教授、矢野晴美感染症学教授、山崎力未来支援研究センター長が参加します。
本学は、この事業の一環として、2022年11月の1か月間、インドネシアの国立ウダヤナ大学、モンゴルの国立モンゴル医科大学、ラオスのラオス国立健康科学大学の各協定大学から3人の医師を招聘し、国際医療福祉大学成田病院・国際医療福祉大学成田キャンパス・国際医療福祉大学病院において、本学主導で研修を行いました。臨床治験の基礎知識や手順、臨床治験の歴史などを座学で学んだほか、国際医療福祉大学成田キャンパス、国際医療福祉大学成田病院、国際医療福祉大学病院に訪問し、治験業務や手術の見学のほか、留学生との交流会なども行いました。
今後は、2023年2月25日に、5か国7大学が参加する研修教育セミナーのオンライン開催が予定されています。本セミナーでは、本学で研修を行った3人の医師による発表やARISEへの参加の同意が得られた9大学による発表、実現可能性調査結果の報告と討議、ARISEを通じたアジアの施設でのスキームの構築などが予定されています。
2023年は、本学にとっては2017年に開設した医学部から初となる卒業生が誕生した記念すべき年です。医学部は開設時から、1学年140人中約20人のアジアを中心とする国々からの留学生を受け入れています。日本で医学教育を受け、日本の医師免許を得た留学生たちが、指導者として帰国し、医療技術を広めていくことが将来母国の医療の発展に貢献していくものであり、医学教育・医療の国際化の小さな一歩となってくれるのではないでしょうか。
アジアの国々との医療協力協定、各国の大学との学術交流協定を結び、長らく国際交流活動に力を入れてきた本学の特長を生かし、今後も引き続きアジア地域における国際共同臨床研究および治験の基盤整備に寄与していきたいと考えています。
会長 下川宏明
(国際医療福祉大学 副大学院長・
臨床研究推進センター長)
AMED アジア地域における臨床研究・
治験ネットワークの構築事業
(臨床研究・治験推進研究事業)
臨床研究・治験は、国民に新規の医薬品・医療機器等を届けるためにその有効性・安全性を検証する科学的に不可欠なプロセスです。また、その制度の充実度が、直接国民の健康・福祉に直結すると言っても過言ではありません。しかし、発展途上国においては、人口の高齢化や生活習慣の欧米化により生活習慣病が急増しているにも関わらず、臨床研究・治験の制度がまだ整っていない現状があります。世界の人口の半数以上を占めるアジア地域にはこうした問題を抱える国がまだ数多く存在しています。本事業では、国のユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)達成の目標の下、アジア地域における臨床研究・治験ネットワークの構築を通じ、国際医療福祉分野での貢献を目指します。
国際医療福祉大学(以下「本学」)は、国際医療福祉分野での貢献を理念として1995年に開学しました。本学は、疾病や障害の有無に関わらず人々が「共に生きる社会」の実現を理念に活動してきましたが、アジアとの共生もその一つです。具体的には、これまでにアジアの13ヶ国・24大学機関・7医療機関と学術交流協定を結び、医学部の定員140名の中で毎年20名のアジアからの留学生を採用してきました(図1)。また、国際的医療人の育成を目指して多くの外国人教員を採用し、医学部の1~3学年は英語を中心とした授業を行うなど他大学にはないユニークな取り組みを行ってきました。これらの取組みを通じて、アジア各国の政府・保健省と太いパイプを築いてきたことも、本学の強みといえます。
令和4年度の本AMED事業に、国立国際医療研究センター(NCGM)を中心とした研究チームが採択され、本学も大阪大学・長崎大学とともに参加することになりました(補助事業代表者:飯山達夫NCGM部長)。NCGMは、これまでに構築した国際研究協力基盤を活用し、令和3年にARO Alliance for ASEAN and East Asia(ARISE)を発足させました。本事業では、アジア諸国における感染症分野での医薬品・医療機器等に関する国際共同臨床試験実施強化に向け、ARISEの国内外基盤の強化を目指しています。加盟施設と6つのワーキンググループでの議論を元に、①産官学民連携戦略推進委員会(大阪大学)、②国際研究開発戦略推進委員会(長崎大学)、及び③国際研究基盤戦略推進委員会(国際医療福祉大学)を新たに設置しました。国際的な緊急事態への対応強化に向けて「ARISE」の協力国・機関の拡大を行いつつ、国内外・産官学のステークホルダーとこれまでの活動と課題を振り返り、臨床評価手法と国際研究開発スキームの進歩を図り、グローバルヘルス領域におけるパンデミックその他の課題解決を担う実際的なプラットフォームの進歩を図ります。
令和4年度の本学の取組みとして、具体的に以下の活動を行います。
①本学と連携のあるアジアの大学病院へのARISEネットワークの拡大
②アジアからの医師の日本への招請と臨床研修の実施
③IUHW国際セミナーの開催
①については、既に本学と連携している7大学からARISE参加の希望が寄せられ、各大学病院の臨床研究・治験の実施体制に関する調査等を開始しました。
②については、令和4年の11月にアジア3か国(インドネシア・ラオス・モンゴル)から3名の医師を日本に招聘し、臨床研究・治験に関する研修を行ってもらいました。
③については、令和5年2月25日(土)に、アジアのARISE参加病院を中心に、オンラインで本事業のキックオフを兼ねて、オンラインでIUHW国際セミナーを開催します(ポスターをご覧下さい)。
本学は、開学以来、長年のアジア諸国との交流を通して、本事業を推進する基盤を有します。本事業は令和5年度以降も継続されることが期待され、本学も引き続き貢献していきたいと思います。皆様のご理解とご支援を宜しくお願い申し上げます。
図1.アジア各国からの医学部留学生の受け入れ(過去6年間)
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